空の高さを知るもの、優木せつ菜の話をしたい。
⚠︎この記事は、スクスタメインストーリー 、キズナエピソードのネタバレを含んでいます。ダメな方はブラウザバックお願いします。
10月3日(今日じゃん)とうとう始まりますね、アニメ、ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。
そんな新しい物語と向き合う今だからこそ、どうしても大好きな優木せつ菜ちゃんの話をしたい。自分の中で一旦大好きな彼女について、整理してからアニメに望みたい。そんなことを思い筆を取りました。
その中でも特に大好きな歌詞に焦点を当て、今回もワチャワチャと書き並べていきたいと思います。よろしければ最後までお付き合いください。
・空の高さとは
僕がせつ菜ちゃんの、曲の歌詞で1番好きなワードが"空"です。
2ndアルバムのMELODY、3rdアルバムのLIKE IT!LOVE IT!で見られるのですが、その空を使ったフレーズの中で、特に好きなフレーズがあります。
空の高さは自分次第で
自由に変えていけるんだって
気づいたのはキミのおかげだよ
もっともっとこの目で確かめたいんだ
空の高さを自由に変えられると気づいた。前向きな捉え方から、彼女の成長を感じられ、それに僕は昔から空の高さという表現が好きなこともあり、特にお気に入りポイントです。
でも好きだからこそ、疑問に思うこともあります。空の高さとはなんなのだ?と。
日常でもふとした瞬間に「空が高いな」なんて表現を用いますが、人はいつ空の高さというものを感じるのか?
雲が遠くにある時?長々と聳え立つビル群を抜けた時?人それぞれでしょうが、あんなに青々とどこまでも続く空に、高さなんて尺度のある表現、当て嵌められるのかとも感じてしまいます。
宇宙に到達したら空の終わりでは?とも思いますが、空と宇宙の境界は曖昧です。実際、NASA、米国空軍、学者、それぞれが定義する宇宙と空の境界は全く違います。80kmとも、100kmともいうし、10000kmなんて途方もなく遠くにあったりもします。
結局のところ「ここまでが空、ここからが宇宙」と決めてしまえばそういうもので『どこまでも空だ!』と思えばそうなのでしょう。境界は人が勝手に決めるものなのです。
そんな本来どこまでも開けてるはずの空に、自分の目に映る雲や、人工物を、壁と設定して、空に高さというものを与えられるのは、ある意味人間だけの特権なのでしょうか?
勿論、それを口にする人に、空に天井があるという意図を含めてる者は中々いないでしょう。我々はその先に宇宙があり、この空を飛び続けたら、いきなり天にぶつかるなんてことがないのは分かっています。
ですが昔の人はどうだったのでしょう?空も飛べず、ましてやその先の宇宙を知らなかった人達は、あの青い空を上り続けたら、いつか蓋のようなものにぶち当たると、本気で思ったりしたのでしょうか?
でもある時人類は歩みを進め、ある時空の境界を飛び出した、そして飛び出した先で、まだ知らない世界があることも知った。
今思えば、ただそれだけのことなのかもしれませんが、その積み重ねが、今僕らの知る世界を形作っています。
誰も知らなかった世界に踏み出す勇気を持った人々。僕が無粋な思いを空に向けられるのも、そんな人たちが踏み出してくれたおかげです。
・せつ菜の見る空
さてせつ菜ちゃんの語る空に話を戻しましょう。彼女は「空の高さは、自分次第で自由に変えていける」と歌いました。つまり、彼女がそれまで感じていた、定義していた空の高さがあったのです。
それがどれほどの高さかは分かりませんが、彼女が空に限界を決めていたのが、意外だと思う人もいるのではないでしょうか?
そう人に思わせるほどの、バイタリティと願いを彼女は持っています。
せつ菜ちゃんの語る野望のことを今一度思い出してほしいです。
みんな、元気ーっ? 優木せつ菜ですっ!
私ね、実は大きな野望があるんですっ!
ちょっと恥ずかしいけど勇気を出して言いますね。
それは“大好き”を世界中に溢れさせちゃうスクールアイドルになることなんですっ!
今の世の中、好きなことを素直に好きって言うの、ちょっと難しいじゃないですか。恥ずかしかったり、誰かにバカにされちゃったり、色んな事情があったり。
でもね、スクールアイドルの世界ってそんなことなくて、やってる人も、応援してる人も、みんなスクールアイドルが大好きで、素直に大好きって言えちゃう。
キラキラしてて、楽しくて、とっても優しい世界。
だって、ここには大好きが溢れてるから。
そんな、誰もが大好きを言えちゃう世界を、私はもっともっと広げていきたいんですっ!
電撃オンラインスクスタメンバー紹介より
【スクスタメンバー紹介】優木せつ菜ちゃんは都市伝説や野望を持つスクールアイドル! - 電撃オンライン
こんな大それた野望を掲げる女の子は、きっとどこまでも走っていくし、限界なんか似合わない、なんて僕も最初は思っていました。
でも触れてみてわかったのです。彼女は思っていたより臆病なのだと。
そもそも彼女が、優木せつ菜と名乗った始まりはなんでしたか?
優木せつ菜は、両親にスクールアイドルを禁止されている中川菜々が、両親にバレず、大好きなスクールアイドルをやるための存在。始まりは自分自身を隠す手段でした。
そしてそれは「中川菜々の大好きを隠すための手段」であることも意味していたでしょう。
そして特に僕が彼女を臆病だと感じてたのは、彼女が自分自身の大好きを語る姿を、暴走、気持ち悪いと評することです。
皆んなが大好きを隠さない世界を望んでるはずのスクールアイドルが、自身の大好きを伝える姿を卑下する。臆病というより、一種のコンプレックスすら感じます。
ですが考えてみれば、簡単なことです。勉強も出来て、運動神経もよく、スクールアイドルとしても優秀、しかし彼女の根本は中川菜々という普通の女の子なのです。
両親に大好きなものを禁止されてきたこと。これが今の彼女に影響を与えていないわけがない。彼女は「両親は自分の将来を考えて」と語っていますが、その裏には長く苦しんできた時間があったはずです。
大好きなことを、最も身近な親に禁止されること、それは自分の大切なものを、大切な人に否定されているようにだって感じたでしょう。
彼女がいつから、好きなものを禁止され、スクールアイドルを始める高校生まで、どのような時間を過ごしてきたのか。僕らは知る由もないですが、年端もいかない女の子が影を落とすのには、あまりにも深すぎる傷です。
一度傷を負ったら、誰だって臆病になり得る。両親に否定されたことで、大好きを伝えることに臆病になった、そしてある時から「自分は大好きを隠していなければいけない」と決めたのでしょう。
それが彼女の感じていた、いや決めつけた空の高さではないでしょうか?
・空の高さを知るからこそ
大好きを伝えるスクールアイドル優木せつ菜。その裏にはずっと、せつ菜の姿をしていなければ、好きなことを伝えられない中川菜々がいたのでしょう。
そしてその姿は彼女の語る理想に歪みを生んでいました。
スクスタのメインストーリーにて、生徒会長再選挙の時に、三船栞子が菜々ちゃんに向けて言ったことを思い出してください。
中川さんの公約は実現不可能であると断言できます。
なぜなら、中川さんの姿勢には根底から齟齬が生じているからです。
中川さん、あなたの本当に大好きなことはなんですか?
生徒会の仕事が一番大好きなことだと言えますか?
答えはノーでしょう。
彼女には大好きなことが他にあって、それを守るために、自分の気持ちを殺して生徒会長をやろうとしている。
無理して生徒会の仕事をしようとしている。
その姿勢が、そもそもの理想と矛盾しているんです。
スクスタ メインストーリー9章9話より
正直当時は感情移入しすぎて寝込みましたが、今思えばこれ以上ない的確な言葉です。ここでいう「中川さんの姿勢」は、三年間虹ヶ咲の生徒が、スクールアイドル同好会のみんなが、好きを実現できる場所を守ること。
けれどそれを語る本人は「スクールアイドルへの大好き」を押し殺し、それを隠していなければいけない環境を、受け入れんとしたこと。
それはせつ菜ちゃんの語る、大好きを誰もが隠さない世界を否定してることにもつながる。彼女の野望は、彼女が閉じこもっている限り、叶わぬものでした。
ですが僕はそうして傷を負ったことで、自分の世界を閉ざしてしまうのは悪いことだと思わないし、恥ずかしいことだとも思いません。
そもそも最初から、空に限界を感じない人、壁を感じなくてもいい世界で生きてきた人が、他者の世界も開かれるよう、望めるのでしょうか?
彼女は空の高さを感じていた、それは好きを隠していなければいけない、苦しみと窮屈さを知っているということです。
傷を抱えて、痛みを知っているからこそ、彼女は同じような傷を持つものに寄り添える。優しい世界を望める。彼女は世界で誰よりも優しい子なんです。
いえ、だからこそ彼女は、一歩踏み出さなければいけないのです。痛みを知って、優しい世界を作りたいと願うならばこそ、彼女は好きを隠していなければいけない状況を、自分自身の空の果てを打ち破らなければいけない。
彼女が望む「みんなが大好きを言える世界」は、特定の場所に隠れて、そこでだけ大好きを共有出来る、閉鎖的なものでしょうか?決してそうではないはずです。
そんなせつ菜ちゃんにとって、彼女の決めた空の境界から出る一歩はなんでしょう?
それは大好きを隠していなければいけない両親に、自分の大好きを真っ直ぐ伝えること。
ただそれだけのこと、けど簡単なことでは決してないです。好きを否定されてきたことが、年端もいかない女の子に、どれだけ深く刺さり苦しめてきたか。
そんな子がいざ、両親と正面から向き合うとき、不安にならないはずがないのです。
けど世界の形を知り、教えてくれた人たちだって、きっと同じなんです。
空の果てにいくこと、その先に出ること、そこに待ってる危険と、未知を思えば、不安になったり、恐怖を抱いたはず。そこまでして飛び出していかなくても、誰も責めないはずです。
でも彼らは飛び出した、世界を知りたいと願ったからこそ、勇気を持って。だから僕らはあの空に果てがないことも、その先があることも知っているのです。
せつ菜ちゃんも望んだのです。誰もが大好きを言える世界を。自分も大好きを言える世界を。
だから彼女は勇気の一歩を踏み出した、ずっと決めつけていた空の境界を超え、両親に大好きを伝えた。そして気づいたのです、自分が思うより、世界はずっと開けていることを。
そして今、その気づきを歌にのせ、僕らに伝えてくれています。80kmでも10000kmでも、どこまでだって、空の高さは君次第なんだよと。
・終わりに
最後に、これはめちゃくちゃ個人事なのですが、僕はせつ菜ちゃんが自分の大好きを、誰かのために諦めたり、隠したりすることがとても苦しいです。
他人の大好きも大切にしてる姿は好きだけど、僕はなによりも彼女自身の大好きを、大切にしていてほしいと願ってます。
だからせつ菜ちゃんが今、大好きを隠さず、大好きなものを笑顔で語っていることがとても嬉しいんです。
でもまだ、彼女は彼女の小さな世界を変えただけ、だから彼女の物語は、野望は始まったばかりだと思います。
しかし前よりも確実に、野望へ進めているでしょう、彼女が自分の望む世界を明確にイメージしているからです。
まずせつ菜ちゃんがあなたに「ファンクラブを作らないか?」と提案されたときの言葉。
せつ菜ちゃんにとって、皆んなが大好きを言える世界は、一部の人だけに与えられる、枠のあるものではないということがよくわかります。
それはどこまでも広がる空の下にあるのでしょう。
そして彼女は、誰もが大好きを言える世界を「みんなの大好きを、誰も否定しない世界」と形容した。傷を負ったからこそ、誰よりも優しくなれた、彼女らしい、とてつもなく優しい世界。
この物語のゴールは、いえゴールがあるのかもわかりませんが、きっと彼女はこれからもそこへ進んでいくでしょう。
僕は優木せつ菜が好きです。可愛くて、好きなこと語ると止まらなくて、変なところで真面目で、臆病で、優しい彼女が好きです。
10月3日、新しい虹ヶ咲の新しい物語が始まります。この物語は、僕たちがスクスタで見届けてきた物語とは、完全にパラレルワールドの関係となってます。
だからそこにいる優木せつ菜ちゃんが、何を望むのか分かりません。もしかしたら僕の知る彼女は、そこにいないのかもしれない。そう考えて怯えていた時期もありました。今も少し怖いです。
だけど僕は、僕の好きなせつ菜ちゃんのことをずっと好きで、新しく向き合うせつ菜ちゃんのことも、好きになっても、そうでなくても、きっと大切にしたいのです。
『みんなは自分の大好きに素直になれていますか?』
『他の人の大好きを大切に出来ていますか?』
あの日投げかけられた言葉に、まだ答えられそうにありません。出来ていると言える自信もないです。
けれどこれから始まる、新しい虹ヶ咲の物語も、新しく生まれるスクールアイドル達も、全て誰かの大好きになり得る。それだけは今なら分かります。
彼女達の野望が確かに教えてくれたこと、いつでも、いつになっても忘れないでいれば、僕も答えられる日が来るでしょうか?