仰ぐ青い鳥と彼方に掛かる虹のお話
青い鳥があの虹を超えて飛べたんだから
私たちにだってきっと出来るよ!
自分達の今までを胸に抱き、再び走り出したAqours。そんな彼女達が仰ぐ青い鳥それは何を意味しているのか?彼女たちが目指す虹の向こうにはどんな景色が待っているのか。
劇中で何度か登場したそれらを紹介しながら、僕の大好きなシーンを振り返りたいと思います。
- 彼女達が探していた青い鳥
さてまず青い鳥、といえばサンシャインではいくつか頭に浮かぶものがあります。
青い羽根
WODERFUL STORIESの歌詞に出てくる青い鳥
そして劇場版で千歌ちゃんが投げた紙飛行機が青い鳥となって羽ばたいていくシーン。
Aqoursの物語のある限りの場面ごとに彼女達の前に姿を表します。
まずWODERFUL STORIESの青い鳥こちらは歌詞からも当然読み取れると思いますが、こちらは畑亜貴さんがラブライブ!サンシャイン‼︎TVアニメオフィシャルブック2で言及しています。
この曲は監督からメッセージを頂いて作詞しました。その一部を紹介すると「メーテルリンクの青い鳥」「鳥かこに入れずに、飛び立っていった先を予感できるとなおうれしい(灯台元暗し)」などです。最後の"灯台下暗し"というワードを見て、つい笑ってしまった記憶があります。監督は面白い方だな、オチがついてギャグになってる、と(笑)。このままでは曲がおもしろくなってしまうので、歌詞は感動方向に持っていきました。
ラブライブ!サンシャイン‼︎ テレビアニメオフィシャルブック2
このようにWODERFUL STORIESの青い鳥のモチーフはモーリス・メーテルリンク作の「青い鳥」という童話がモチーフになっています。(ちなみにオフィシャルブック2はこのお2人のお茶目な一面以外にも室田雄平さん、加藤達也さん等さまざまなスタッフさんの裏話を聞けてめちゃくちゃ面白いので買ってない人沢山買ってください)
青い鳥は2人兄妹のチルチルとミチルが、夢の中で過去や未来の国に幸福の象徴である青い鳥を探すために様々な冒険をするという話。結局青い鳥を見つけることはできず、2人は目を覚ますのですが、部屋にある鳥かごの中に青い羽根を見つけます。そしてチルチルとミチルは、本当の幸せは手の届く身近なところにあるのだということに気づくというお話です。
このあらすじだけでもAqoursが輝きを探す過程、見つけた輝きがこの童話における幸せの象徴青い鳥はリンクしているのが分かると思います。
高海千歌が見つけた青い鳥、それは誰の胸にも何かを始められる輝きがあるということ。
青い鳥 探してた 見つけたんだ
でも籠には入れないで 自由に飛ばそう
見つけた答えも自由に飛ばしてしまう。でも何も心配はいりません。
だってどこに行ったってそれは必ず彼女達のすぐそばにあるのです。
- 彼女達が仰ぐ青い鳥
さてまずは冒頭でも触れた劇場版のあのシーンにおける虹を超える青い鳥のモチーフはなんでしょう?
これは劇場版のタイトルにもあるover the rainbow、1月13日に行われたCYaRon!の舞台挨拶で酒井監督もご一緒に登壇された際に「劇場版のモチーフはオズの魔法使い」と語っていたことからも1939年公開のミュージカル映画オズの魔法使いの劇中歌「虹の彼方に(原題somewhere over the rainbow)」であることは間違いないでしょう。意訳ですが歌詞をのせます。
意訳
虹の向こう 空の彼方に
かつて子守歌で 耳にした国がある
虹の向こう空は青く
どんな夢でも叶う場所星に願いをかけて 目を覚ませば そこは雲の上
悩みはキャンディのように 溶けてなくなる
それが 私が今いる場所
虹の向こう 青い鳥が飛んでいる
鳥が虹を越えられるなら 私にもきっと できるはず
作曲ハロルド・アーレン 作詞エドガー・イップ・ハーバーグ
冒頭で載せた千歌ちゃんのセリフ、まさにこの歌詞の最後にリンクします。
このオズの魔法使いにおけるover the rainbow、主人公であるドロシーがカンザスという故郷の田舎暮らしは退屈、辺りの人たちといえば何かが欠けている人ばかりと感じていました、そこでドロシーはもっといいところ、虹の彼方にある自身が理想とする場所を夢見ていた、その理想の場所へ私も飛んで行きたいという願いの歌なのです。
そんな青い鳥を仰ぎ、夢を抱くドロシーからオズの魔法使いの物語は始まります。
さてここまででサンシャインにおける青い鳥のモチーフについて少し触れていただきましたが、すでに共通点がありませんでしたか?
そう2つの童話、"青い鳥"という存在が物語に始まりをもたらすキ―の役を担っているのです。
ラブライブ!サンシャイン‼の物語は高海千歌がμ'sと出会ったことで物語が始まります。
(もっといえばμ'sという存在があったからこそ、ラブライブ!サンシャイン‼は、Aqoursは生まれました。サンシャインにとっての”青い鳥”はまさにμ'sの存在でしょう。)
そして千歌のもとに青い鳥は始まりの印を落としていきます。
わかった 私が探していた輝き 私たちの輝き
足掻いて足掻いて足掻きまくって やっと分かった
最初からあったんだ!なにもかも一歩一歩
私たちが過ごした時間のその全てが…それが輝きだったんだ
探していた私たちの輝きだったんだ
高海千歌、Aqoursにとっても青い鳥は始まりを告げる鐘なのです。
- 虹の彼方を知る話
では先程オズの魔法使いの中でも触れた劇場版に現れた青い鳥。先程ドロシーが口にした歌と千歌が抱いた思いはリンクしていると言いました。
結論から言いますと、ドロシーが旅の末行きつく答えはサンシャインが描くそれに似ています。
ガンザスでの暮らしに満足できていなかったドロシー、ある時竜巻に巻き込まれ「オズ」の国へそこで出会った考えのないカカシ、こころのないブリキ、そして勇気のないライオン、彼らに欠けているものを見つける手伝いをすることになります。
そんなドロシーの姿は何かに夢中になりたい、脇目も振らずに走りたいと現状に燻っていた高海千歌と、それに応えるように集まるAqoursのメンバーに重なります。
どんな願いでも叶えてくれるオズの大魔法使いを目指して彼女達は旅を始めます。そんな「オズ」の国での多くの経験を通してドロシーと仲間たちも少しずつ変わっていきます。そしてドロシーと仲間達は旅の中で自分達が望んでいたものは、既に手に入れていただそれに気付けなかっただけだった。それをオズの大魔法使いに教えられ、ちょっとした証を受け取ります。
カカシは大学の卒業証書を、ライオンは勇気の勲章を、ブリキはハートの形をした時計を。
そのもの自体に大きな影響力はないでしょう。ただそれを思い続けるということ、それを促すために目に見える物は時として大きな意味を持たせることが出来ます。
そしてドロシーが望んだ理想の場所、虹の彼方の国、それは自分の家だということに気づきます。
退屈だと思っていた故郷、何かが欠けていると思っていた人々、全てはかけがえのない大切なのだと。
自分が持っていた大切なものを知った時ドロシーの冒険は終わりを告げます。
理想の国に行くための虹とは彼女達の歩んできた軌跡、そしてその中で得た物に気付くための架け橋だったのです。
ラブライブ!に優勝すれば、廃校を阻止すれば、そんな願いを叶えられば見つけられると思っていた輝き、そのために足掻いて足掻いて、結局叶わなかった想いもあった。
輝きは見つけられなかったと思った。でも共に日々を過ごした仲間と歌う中でようやく気付いた。
輝きは自分達の過ごしたかけがえのない時間の中で手にしていた。そんな千歌の歌に応えるように虹がかかります。
Aqoursの軌跡を描くように、彼女達が最も時を重ねた浦の星の麓から。
- そして、明日へ
3年生と離れて過ごす6人のAqoursの日々、3年生と再びステージに立つ物語の中で彼女達は再び知りました。
自分達の今までは0になんかならないこと。
目に見えなくても、駆け抜けてきた今までは自分達の胸の中で残り続けること。
自分達の今までを胸に刻み、みんなはまた走り出そうとします。
トキメキを持った目で千歌を見つめながら。
みんなに応えるように千歌は、足元の紙飛行機を再び手に取ります。
望んだことが全て叶うわけではない、どんなに努力しても、自分たちの努力なんか関係ないところで夢は打ち砕かれるかもしれない、きっとそれは挫折なんかよりも重い残酷。
それでも、それを知っていても、彼女達はまた新しい始まりを求めます。
今を全力で楽しむために。
明日に向けて、とびきりのなにかを。
千歌は力一杯紙飛行機を放ります。今までよりもっと遠くへ飛んでいけるように。
それは青く染まり翼を羽ばたかせ虹を超えていきます。
何度も何度も、飛ばそうとしてきた紙飛行機。
何度も何度も、落ちてしまって
それでも決して彼女の元から消えはしなかった。
今まで投げ続けてきた紙飛行機だって、始まりをくれる"青い鳥"だったのです。
だからこそ何度飛んでも、何度落ちてもそれは必ず高海千歌の足元にあるのです。
だから何度だって立ち上がれる。何度だって追いかけられる。望む限りいつだってまた始められるのです。
そんな青い鳥を見据え、再び彼女達は走り出しました。
次に夢見る、虹の彼方にある場所へ。
それぞれの未来へ。
本当はこれから先の物語も見届けて行きたいけど、きっと皆んななら大丈夫。
明日は今日より夢に近いはずだから。